■予防歯科の大切さ
皆さん、「8020運動」をご存知ですか?
「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」という運動です。なぜ20本なのか、それは、少なくとも20本以上自分の歯があれば、ほとんどの食べ物をおいしく食べられるからです。食べ物をおいしく食べられるという事は健康寿命が長くなることにもつながります。
では、歯を失う一番の原因は何でしょう?多くの方が虫歯だと思いがちですが、実は違うのです。虫歯は「32%」で第二位になります。
では、歯を失う理由の半数近く「42%」を占める第一位は何でしょうか?実は、「歯周病」なのです。「虫歯と歯周病」で「全体の70%以上」を占めています。
では、歯周病はそもそも何でしょう?皆さん、言葉自体はよく耳にすると思いますが、どんな状態を指すのか分かりますか?
歯周病とは
歯周病が恐ろしいのは、お口の健康だけではなく、全身に影響を与えてしまうことでしょう。
口 | 歯を失う | 歯を支える歯茎と骨を溶かしてしまい、最終的には歯を失う。 また、口臭の要因となる。 |
---|---|---|
脳 | 認知症 | 歯を失うことで、噛むことによる脳への刺激が減りアルツハイマー型認知症の要因になる。 |
肺 | 肺炎 | 歯周病菌が、食べ物や唾液が誤って肺に入っておこる「誤嚥性肺炎」の大きな原因。 |
心臓 | 狭心症 心筋梗塞 |
歯周病菌が、血液中に流れ込むことにより、心臓の内膜に付着し、心臓病を引き起こす要因となる。 |
すい臓 | 糖尿病 | 歯周病がひどくなると、炎症により出る物質が血糖のコントロールを妨げて糖尿病を悪化させるといわれている。 |
おなか | 肥満 | 食生活から歯周病予防を心がけることで、肥満防止につながります。よく噛めば、唾液がよく出て口の中をきれいにします。 歯周病を防ぎ満腹感が得られるため、体質改善につながる。 |
子宮 | 早産 | 早産の人や、2500g以下の低出生体重児を出産した人たちの調査で、歯周病が進行しているは歯周病でない人の、7.5倍という結果がでた。 |
血管 | 動脈硬化 | 血管に歯周病菌が入り込むと、さらに血管を狭める要因となる。 |
骨 | 骨粗鬆症 | 女性に特に多く、高齢者の寝たきりになる大きな原因。更年期女性はさらに注意が必要。 |
皆さん、驚きませんでしたか?自分の体だけでなく、妊婦の方の場合はおなかの赤ちゃんにまで影響を与えてしまうのです。
では、なぜ、歯周病になってしまうのでしょうか、順番を見てみましょう。
まず、はじまりは歯と歯茎の境目の溝です。この溝は「健康な方でも」2mmほどあります。この溝に歯垢がたまることが、歯周病の始まりです。
第一段階:歯肉炎
歯垢には、歯周病菌が含まれています。この歯周病菌が出す毒素や、細菌と戦う自分自身の免疫細胞が炎症を起こすのです。細菌が増え、免疫の防衛力を上回ると、炎症がさらに進みます。これが、歯肉炎です。歯肉炎の時点では、少し歯茎に腫れがあるだけなので、適切なブラッシングをすることで健康な歯茎に戻すことができます。
しかし、自覚症状が出てないので、皆さん歯周病になっていることに気づかず過ごしてしまいます。
第二段階:歯周ポケット
歯肉炎の状態が続くと、炎症により歯と歯茎の境目を繋いでいた頑丈な繊維がちぎれてしまいます。ここで初めて自分の細胞組織を傷つける形になります。この段階を歯周ポケットと呼びます。歯周ポケットになると、歯と歯茎の境目の溝が根の先に向かって深くなってしまいます。これは決して自然には元に戻りません。
歯周ポケットは歯周病菌の温床です。歯茎は常に歯周病菌からの攻撃を受け続けている状態になります。炎症が続くことによりさらにポケットは深くなり、ポケットの底には悪玉菌が棲みついてしまいます。
第三段階:重度の歯周病
歯周ポケットが深くなると、歯茎の下にある骨にまで細菌の攻撃が始まります。この攻撃により歯を支えている骨が溶けてきます。この状態をほっておくと、骨の大部分が溶け、歯がぐらぐらになってしまいます。ここまで来ても、自覚症状は薄く、はっきりとした自覚症状が出るのは、かなりの骨を失ってからです。骨が溶け、すべての支えを失った歯は抜けてしまいます。気がつくと手遅れの状態になってしまいます。歯周病は糖尿病と同じく慢性疾患なので、一度進行すると完全に元に戻すことが出来ません。
■歯周病の治療方法
歯周病の状態に関わらず、まず歯磨きの指導を行います。治療期間中、治療期間が終わった後でも、歯磨きは毎日の習慣です。ここを、疎かにしたり、間違った方法で歯磨きをしてしまうと、せっかく直した歯周病の再発の原因となります。
ただし、歯周病になると、体の病気と違い、日々のブラッシング等で根本を直すことはできません。ひどい場合は手術をして治すしか方法はなくなります。
では、軽度の方と重度の方の治療の違いを見てみましょう。
軽度の歯周病の場合
歯周病が比較的軽度の方は「スケーリング・ルートプレーニング」を行います。
まず、歯周ポケット内の歯垢や歯石を器具で取り除きます。最後に歯根面をツルツルに磨き上げ、汚れが再度つくことを防ぎます。
重度の歯周病の場合
歯がもう、ぐらついてしまっている歯周病の場合は、歯周ポケットが広くて深いため、溝の奥深くまで歯垢がこびりついています。溝の奥に溜まった歯垢は、表面からは除去できません。
そこで、「フラップ手術」で歯茎を切り開き、中にたまっている膿や歯石を取り出す手術をおこないます。この手術により、歯周ポケットの奥深くまでしっかり掃除することができ、悪化した口内環境をリセットできます。
歯周病簡易チェック
こんなに怖い歯周病。成人の80%は歯周病になっていると言われています。
現在の自分の口内環境を知るためにも歯周病簡易チェックをしてみましょう。
1. 歯茎が下がり、歯が長く感じる |
2. 歯がグラつく |
3. 歯茎の色が赤い、もしくは腫れている |
4. 口臭が気になる |
5. 冷たい水がしみる |
6. 朝起きた時に口内が粘つく |
7. 歯茎から膿が出る |
8. 歯を磨くと血が出る |
9. 生活が不規則である |
10. 歯と歯の間にすき間ができた、歯に物が挟まる |
11. 歯の表面を舌でさわるとザラザラする |
以上、何点当てはまりましたか?実はこれ、1つでも当てはまると歯周病の可能性があるのです。
では、見ていきましょう。
0点の方
…歯周病の可能性は低いでしょう!ただし油断は禁物。健康状態や生活習慣の乱れから歯周病のリスクが高まります。
また、歯周病菌は人から移ります。まわりにも気をつけ今後もしっかりと予防をしましょう。
1点の方
…軽度の歯周病の可能性があります!現在、歯周病菌が歯の周りの組織の中に進入し、歯を溶かす前段階かもしれません。
早めの対処が、今後の治療に影響を与えます。
2~6点の方
…中度の歯周病の可能性があります!歯周病により破壊がすすんでいる状態です。歯茎が腫れ、歯のぐらつきが中度の症状です。
歯茎を触ってみてください。どうですか?早めに対応することをお勧めします。
7点以上の方
…重度の歯周病の可能性があります!かなり、歯を支える骨が溶けており、歯がぐらついています。歯茎は痛くないですか?
また、ここまで悪化すると、自分では気付いていなくても、口臭がきついはずです。
いかがでしたか?自分のお口の状態は大丈夫ですか?また、セルフチェックだけでなく、歯医者さんでの口内チェックもお勧めします。
歯周病にならないためにも
歯周病はサイレントキラーとも呼ばれ、気づいた時にはもう手遅れになっていることが多いです。また、全身に影響を与える怖さもあります。重度まで進行してしまった歯周病を治すのはとても難しいことです。
しかし、歯周病にならないようにするのはとても簡単です。皆さん毎日歯磨きはしますよね?実際、日本人の95%の方は歯磨きを欠かさないそうです。では、日本で虫歯になる人はどれぐらいいるのでしょうか?実は、96%の方が虫歯の経験があります。事実、歯のプロである私達でも毎日20分以上歯磨きをしても磨き残しが出来てしまいます。それぐらい歯磨きとは難しいものなのです。もちろん毎日の歯磨きは欠かせません。歯磨きを怠ると、口内環境は悪くなるばかりです。
では、どうすれば、歯周病や虫歯にならないようにできるのか?
それは、予防歯科治療を行うことです。
皆さん、最近歯医者に行っていますか?
日本は予防歯科の観点から見ると世界からかなり後れを取っています。欧州、特に予防歯科に力を入れているスウェーデンと比べると一目瞭然です。予防歯科をしている人の割合が、スウェーデンが70%に近いのに対し、日本は何と26%しかありません。
また、80歳以上の方の歯の本数で比べても、日本は総入れ歯の方がほとんどに対し、スウェーデンは何と平均で24本以上だと言われています。日本では、ほとんどの方が虫歯になり初めて歯医者に行きますが、今後長い目でみて、いくつになっても自分の歯でおいしく健康に食べ物を食べるには、それでは遅いのです。
おちデンタルクリニック長久手では
私達は、予防歯科に対しても力を入れています。
私達のコンセプトは、「究極の虫歯治療は虫歯を作らないこと」
もちろん、虫歯になってしまった方へは最高の治療を受けて頂きたいと、先進の機器などは揃えてあります。
しかし、それ以上に、「虫歯にならないこと」これが大切です。治療を繰り返すと、必ず歯の寿命は短くなります。また、治療を繰り返すことで、治療費がかさみます。そうならないためにも、今ある歯を大切にして欲しい。その気持ちで私達は、予防歯科に力を入れています。
お口の健康は身体の健康に直結します。また、体の中で一番メンテナンスがしやすいのも、お口です。
「買い物に行くついで」「映画を見るついで」
あまり、歯医者に行くと身構えずに一度、長い目で健康に過ごすためにもお口の健康診断にいらしてみてはいかがですか?